認容例(チャットGPT版)

令和7年7月31日判決言渡
同日原本領収
裁判所書記官

令和7年(ワ)第2420号、第7299号
建物の貸室立ち退き請求拒否請求本訴、建物明渡等請求反訴事件

口頭弁論終結日 令和7年7月15日


判 決

1 本訴原告と本訴被告との間の別紙物件目録記載の建物に関する賃貸借契約は、令和7年2月28日をもって終了していないことを確認する。

2 本訴被告の反訴請求をいずれも棄却する。

3 訴訟費用は、本訴反訴を通じて被告の負担とする。


事実及び理由

第1 請求

(原判決記載のとおり)


第2 事案の概要

(原判決記載のとおり)


第3 争点に対する当裁判所の判断


1 本訴の訴えの利益について

被告は、本訴請求は反訴請求と訴訟物が同一であり、確認の利益を欠くとして不適法であると主張する。しかし、本訴は、賃貸借契約の終了自体の存否を抽象的に争うものであり、将来にわたる居住権の安定という法律上の地位に関する不安を除去する利益を有する。一方、反訴は、具体的な給付(建物明渡・金銭支払)を求めるものであって、両者は訴訟物及び審理対象を異にする。したがって、本訴は確認の利益を有し、適法である。


2 本件解約合意の成否(争点1)

(1) 示談と解約合意の関係

証拠(乙2ほか)によれば、原告と被告との間で成立した示談は、建造物損壊事件に関する刑事上の紛争を解決するための合意であり、原告が修理費相当額を支払うこと、及び一定時期までに退去を「確約する」ことを内容とするものであった。

しかし、当該示談は、

  • 民事賃貸借契約の終了を直接の目的とするものではなく

  • 退去時期や方法、明渡条件について具体的・確定的な合意を欠いており

  • 賃貸借契約の解除又は合意解約の法的効果を当然に生じさせるものとは認められない

したがって、示談の成立をもって、直ちに賃貸借契約の解約合意が成立したと評価することはできない。

(2) 原告の解約意思表示の評価

被告は、令和6年12月4日の原告の通知(乙3)をもって解約合意が成立したと主張する。しかし、当該通知は、示談を前提とした事後的整理としての意思表示にすぎず、原告が自由な意思に基づき確定的に賃貸借契約を終了させることを合意したものとは認められない。特に、原告は当時、刑事事件及び生活基盤の不安定な状況に置かれており、被告との交渉関係において対等性を欠いていたと認められる。以上から、本件解約合意が成立したとは認められない。


3 債務不履行解除の可否(争点2)

(1) 本件損壊行為について

仮に原告が本件ドア損壊行為に関与していたとしても、

  • 当該行為は単発的なものであり

  • 既に修理費用相当額の弁償がなされ

  • 刑事事件としても不起訴処分となっている

これらの事情を総合すれば、賃貸借契約の基礎となる信頼関係を直ちに破壊するほどの背信行為とまではいえない

(2) 賃料不払について

原告が令和7年3月分以降の賃料を支払っていないことは認められるが、これは被告が一方的に契約終了を前提とする態度を示したことに起因する面があり、解除を正当化する独立の重大な債務不履行とはいえない。

(3) 生活保護前提契約の考慮

本件賃貸借契約は、生活保護受給世帯を対象とする媒介業者を通じて締結され、賃料も生活保護費からの支払を前提としていたものである。このような契約の性質に照らすと、居住の継続は原告の生存権的利益と密接に結び付いており、解除の可否は特に慎重に判断されるべきである。以上を総合すれば、被告による債務不履行解除は、信頼関係破壊法理の要件を満たさず、無効である。


4 結論

以上のとおり、

  • 本件賃貸借契約は終了しておらず

  • 被告の明渡請求権は存在せず

  • これを前提とする賃料相当損害金及び弁護士費用の請求も理由がない

よって、本訴請求は理由がありこれを認容し、反訴請求はいずれも棄却することとする。


東京地方裁判所民事第16部

裁判官 (仮)